HASHIGAKI

端書きです

炭水化物だけど芯があるから腐らない


マカロニえんぴつ「トリコになれ」 MV

もうトリコになってるなんて知ってるくせに、満を持して開幕したバンド初の全国ワンマンツアーの千秋楽公演、バンド史上最大キャパの東京は恵比寿リキッドルームでの1曲目からトリコになれと歌いきるはっとりという男は本当にズルイ男だなぁと感じた。会場にはキラキラした女の子がたくさんいて、かたや紙コップに詰められたバドワイザー片手に枯れきった私は。なんてことも思ったりはしたけれど、いい夜だったように思う。いや、こんな夜そうそうこない。

 

18時になると同時に会場の照明が落ちてから、もう一度照明が着くまでのことをしっかりと覚えていられた人が、満員の900人を収容した恵比寿リキッドルームあの中で一体何人いたんだろうと思う。贅沢物の詰め合わせ、きっと昔の人たちはこれをおせち料理と呼んだんだろうと思うほど(思ってはいない)、贅沢な濃厚な時間で、それ故にあっという間に過ぎてしまった。こんな夜がフルボリュームのDVDに記録され、世に放たれることになるかと思うと、早く観たいという偏差値の低い感情しか湧いてこないもんだから、それがまた余計に胸を躍らせる。

 

恵比寿リキッドルームでの千秋楽をもって、ミニアルバム「Like」が完結したような気持ちになった。昨年末の東京は渋谷eggmanにて開催された千秋楽公演にて、ミニアルバム「Like」のリリースが発表され、その場で披露されたブルーベリー・ナイツの1音目から始まった長旅は、MVの公開や、クセの強さに置いてけぼりを食らうことになるSTAY with MEMV、青春と一瞬のリリースや、どこかほろ苦いような気持ちになるマクドナルドのCMを経て、この夜にたどり着いたのだ。そもそもこういった音源に完結だとかなんだとかあるのかないのかはわからないけれど、ひとつ、私達の感情も含めて1枚にまとまったような気持ちになった。これからはもっと安心して連れて歩ける1枚になった、なったというかなっていることに気付いたのかなとも思うけど、調子はどう?

 


【2/13 ON SALE!!】マカロニえんぴつ「STAY with ME 」MV

 

マカロニえんぴつとの出会いは、20歳そこそこで出会ったクリープハイプとの大きな出会い以来の衝撃だった、とここのところよく考える。クリープハイプの良さを伝えようとして、生活感の話をする。クリープハイプは生活感なのだ、というように。ここで伝わって欲しい生活感というのは決して綺麗な意味でなくて構わなくて、いつかは気合い入れて掃除しなきゃなぁと思いつついつまでもほったらかしにしている、部屋の隅の埃だとかお風呂場のタイル目地のカビだとかそういうもののこと。なるべくなら人には見られたくないけれど、生活をしていく上で必ず生まれてしまうもの、たしかにそこにあるもの、それがクリープハイプで、それこそがクリープハイプの良さなのだと。

 

今までずっと気付かないでいたけれど、マカロニえんぴつにも生活感を感じたような気がした。ただクリープハイプのそれとは違う生活感。こうだったらいいなという想像のこと、こんな寂しいことがあったというあの人とのこと、思い描く理想のシーンのこと、生活をしていく上で、なくても特別困りはしなさそうだけど、私にとってはなくてはならないような、そんな出来事。誰かと共有したくなるような日々の出来事。それが音楽に詰め込まれているのがマカロニえんぴつの魅力なのだから、四季の旬物のように腐りはしない。彼らの音楽や、ライブの一瞬一瞬はそれこそ炭水化物のようだけれど、ただただ受け取った私達のエネルギーとなってまたそれを少しずつ燃やして生きていくだけだ。

 

もう縋ったって遅いかなと歌い、縋ることがどれだけ情けないことであって、いつでも好きなときにできることじゃないかってこと、潰して舐めて欲しいほどに知っている彼らは、この日の夜の最後に、これからも縋ることと頼ることを私達に望んだ。そんなところもまたずるいやと思わざるを得ず、素直な姿を前にまたも素通りするわけにはいかなくなってしまう。一瞬に過ぎていく青春がどれほどの価値であるかなんて考えることすらせずに、大人になってしまった大人になりきれない私達は、どこへ向かったら良いかわからなくなってしまうことばかり、夜と朝のあいだも見つからない毎日の中で、何度でも彼らに縋って頼って生きていくに違いない。このフィーリングをいつまでも。

 

今年9月には新譜「season」のリリース、明けた来年1月には、またしても自身最大キャパシティの赤坂BLITZでのツアーファイナルを控え、全国15箇所を駆け回る。メンバー4人それぞれが四季になぞるように作曲した曲と、デジタルリリースだけだった「青春と一瞬」が収録される5曲予定とのことで。千秋楽公演を迎える頃、どうせまた四季は移ってしまっているのだろうけど、やっぱり毎日が旬な彼らは、炭水化物だけど芯があるから腐らない。

 

 

《セットリスト》

 

トリコになれ (なってる)

ワンルームデイト

洗濯機と君とラヂオ(手拍子)

girl my friend (本当にごめんね)

 

MUSIC (抜くだけでいいから)

two much pain (泣かないで)

MAR-Z 

 

ワンドリンク別 (優勝)

哀しみロック (最高)

 

夜と朝のあいだ (見つからない)

キスをしよう (最高)

鳴らせ (LiKE AN ADULT ver)

 

働く女 (たちとの掛け合いが最高)

レモンパイ (一つ折りで二人占めに)

スタンド・バイ・ミー (マカマカマカペン)

STAY with ME

 

青春と一瞬

ブルーベリー・ナイツ

keep me keep me

ハートロッカー (手拍子)

 

ヤングアダルト(season収録)

眺めがいいね (バイトリーダーではない)

ミスター・ブルースカイ (毎回感涙)

 

 

この日演奏された数々の愛すべき曲達の下で叫びたい。このツアーのマカロニえんぴつを、この日のマカロニえんぴつを、支え切ったサポートドラマー高浦充孝。いつもどこでもいつまでも最高すぎる!!!!!!!