HASHIGAKI

端書きです

町田でナキシラベを目撃した

哭く(泣き叫ぶ事)と調べ(旋律の意味)を合わせた造語

「哭き調べ」

ノスタルジック・エモーショナルな楽曲を由来に、勢いのあるライブパフォーマンスを武器とするドラマチックロックバンド

「ナキシラベ 」

 

などという、ホームページに記載のある紹介の文字だけでは足りないどころか借金して回ってもまだ足りないくらいに、今各地のライブハウスで精力的に活動している若き精鋭。

なによりも最大の魅力は、男女2人のボーカルが織りなす叙情溢れる歌声。まるで1つの物語に対して2つの視点を次々に切り替えながら照明を当てていくような進行を見せる。そしてそんな2つの「目」を支え後押しし、時に飲み込んでやろうかというような姿を見せる力強いサウンド。全てを混ぜ込み1つにするような身体の動き、パフォーマンス。これら武器を持つ彼らは観客の心を完全に引き込み、嵐のように爪痕だけ残し去っていくのだ。

私がいちばん最後に見たのは、昨年9月の小田原イズムだった。小田原の音楽の心の芯と言っても過言でなかっただろうソライアオのラストギグの日だったと記憶している。彼らが今年リリースした「phenomenon.e.p」の2曲目に収録されている「ao」を涙ながらに歌い上げた姿に胸を打たれたあの日から気付けば1年以上も彼らを見ていなかった。彼らは昨年と同様、神奈川県小田原市を背負ってステージに立っていた。ただ今夜、1年以上ぶりに見た彼らは、出会った全ての街と仲間すらも背負ってステージで素晴らしい夜にしていた。彼らの成功は、きっと相当の数の人々にとっても大きな成功となるに違いないと確信した。もちろん、小田原が地元である私の心を1片も残すことなく突き上げてくれた。もっとライブハウスで多くの人に目撃され、今よりもずっと大きなステージで鳴らしぶつけ続けて欲しいと思えた町田の夜だった。大きく深く爪痕を残しながらも、快晴を導くのが、本当に強い嵐なのだ。